労働災害、健康障害から労働者を守ることは事業者の大きな責務です。そのための仕組み作りを行うことを法律(労働安全衛生法)が要求しています。この仕組みを安全衛生管理体制といいます。
安全は、事業者(その事業場の経営トップ)が積極的に関与することが必須です。トップは基本方針を表明し自らが総括安全衛生管理者になります。トップを支える専門家が、
です。トップが表明した意思を実行する恒久の社内組織が安全委員会、衛生委員会または安全衛生委員会です。
労働安全コンサルタントもしくは労働衛生コンサルタントは事業所の社内組織である安全衛生管理体制を外部専門家として指導助言する労働安全衛生法が定めたコンサルタントです。
労働安全衛生を守るしくみづくり
ヒヤリハット活動
実際の労働災害には至らなかったがヒヤリとした、あるいはハッとした事を収集あるいは報告を求めると職場の実態にあった実際的な災害防止活動に役立てることが出来ます。社内の事例だけではなく災害防止団体や業界団体などが公表している事例も収集するとさらに充実します。
ツールボックスミーティング(TBM)
作業開始前に10分くらいでその日の作業の予定や段取り、分担について打ち合わせを行い作業者間のコミュニケーションを図る事を行います。現場に出かける前に道具箱を足元において行う打ち合わせであることからこの名前が広がりました。
KYT(危険予知トレーニング)
危険予知訓練(KYT)は、職場に潜在する危険要因を発見・把握・解決してゆく手法です。ヒューマンエラーによる事故防止に有効ですので広く行われています。作業の状況を描いたイラストを使用する、あるいは実際に現場で模擬してみせるなどして、どこが危険かどのように危険かなどの危険要因を作業者一人一人に考えさせ、危険があることを認識させ、納得させて、作業者に危険への感受性を高めさせ、併せて問題を解決する能力を身につけさせる訓練です。機械や設備のリスク低減方策で対処すべきものを作業者の訓練で安全を保つものではありません。
指差呼称
作業を行うときに作業の対象を指差し発声してどのような作業をするのか、そして安全を確認して、次の作業に移る安全の手法です。バスの運転士が、右手方向を指さして「右」・「よし」、左方向に向き直り左手方向を指さして「左」・「よし」、正面をみて「前方」・「よし」、「出発進行」というのが一例です。効用として:
- 指で指すことで、注意を集中する。
- 習慣的な半ば自動的に行う行為でも発声で意識化する。
- 発声することで記憶に残る。
- 指さし発声することでワンテンポがはいり焦った行為が減る。
- 周囲の人に何をやっているかを知らせることが出来る(作業者の行為の見える化である)。
事故に直結する作業(行為)では、指差呼称する習慣を身につけると良い。
(1) 複数分野の専門家により共同指導し喜ばれました
ある事業場から、工場の廃液処理作業を協力会社に委託するに当たり、その作業全般についてリスクアセスメントを実施したいので、リスクアセスメントについての指導をして欲しいとの依頼を受けました。通常は一人でリスク評価表をもとに指導しますが、今回は化学薬品関係の指導の経験があるコンサルタントと共同で事業場を複数回訪問し、現状の把握及び点検の後にご指導致しました。
私達コンサルタントから見ると、通常作業として長年行っている作業の中には、防毒マスクや保護衣をこの先5年も10年も付けなければ仕事が出来ないのか、或いは、もう一段上の低減対策は本当に無いのか等々に言及し指導しました。視点を変えた専門的な指導の結果、本当に喜ばれました。
(2) コンサルタント制度推進月間を活用しました
日本労働安全衛生コンサルタント会では6月15日が社団法人の組織誕生の日ということで、6月をコンサルタント制度推進月間としています。その前後3ヶ月を無料巡回相談制度月間と定め、過去に安全衛生診断や指導をした事業場にアポイントをとって訪問し、相談事を受ける月と定め、無料巡回を実施しています。
この期間中に、私が数年前に安全の指導をした事業場にアポイントを取って訪問しました。当時お世話になった安全管理者が工場長で、工場長に大変喜ばれ対応して頂きました。いくつかの指導を行い、再度訪問することを約束しました。
(3) 安全大会の安全講演講師を急遽派遣しました
ある事業場から、神奈川支部事務局に問い合わせがあり、数日後に安全大会を開催するので、その時の安全講演の講師を紹介して欲しいとの依頼がありました。 依頼内容は、数ヶ月前から会場を予約し、関係者に招待状を発送し等の準備万端整え当日を迎える予定が、安全大会の数日前に予定していた講師が急遽入院したため、安全大会の次第に穴があくこととなり、急遽神奈川支部事務局に相談したとの事でした。
神奈川支部では、依頼主の業種を考慮し、事業部コンサルタントから適任者を選任し派遣しました。講演が数日後ということで準備が大変でしたが、講演終了後、「急な話にも拘らず引き受けて頂き有難うございました」と非常に感謝されました。
(4) 安全教育マンネリ化を防いで喜ばれました
国交省やNEXCO(旧JH)等発注の公共工事を施工する場合、共通仕様書により毎月1回、半日以上の安全教育を作業員全員に対し実施する事が規定されています。長期の工事の場合、決められたスタッフで安全教育を繰り返していると教育がマンネリ化してきます。労働安全コンサルタントがその事業場の年間安全衛生計画に基づき安全教育を代行することにより、より広範囲の安全教育が実施され、また、同時に実施する現場巡視により、事業場に潜む潜在的危険要因の洗い出し及び危険要因の排除方法が明確となり非常に喜ばれました。
(5) 過去に指導してきた事業場からの感謝のメールを貰いました
メールの内容は、「先生のおかげで、安全衛生方針の表明、安全衛生管理計画の作成と実績管理、作業手手順書の整備、また、リスクアセスメントの具体的な活動とリスクの低減等の記録が整備されていたことや、安全衛生委員会の開催と議事録等が揃っていた等のおかげで労基署の担当官に説明する際に随分助かりました。本当に有難うございました。」と非常に感謝されました。
3年前に特別指導事業場に指定されたある製造業の工場長から頂いた感謝のメールです。3年前に労働基準監督署から特別指導があった際に、コンサルタントから指導を受けたが、今までに事業場を挙げて取り組んできたことが評価され、この事業場が安全衛生体制の確立の為に取り組んだ成果が認められたということです。
(6) deleted
(7) 「快適な職場環境の実現」を提案し喜ばれました
中小企業集団より、人材確保事業推進事業の一環として、「快適な職場環境の実現」というテーマで原稿の作成依頼を受けました。
安全衛生に関する書類は文字だけでは、一般の方に理解してもらいにくいようです。私自身のコンサルタント業務経験をふまえた上で、汎用性のある現場を想定した内容とし、法令条文も労働安全衛生法よりも労働安全衛生規則等を重視して、個々の職場でどう考え、具体的にはどうすればよいのかにポイントを置き、イラストを多用した原稿に纏め上げました。
同原稿を事務局へ持参したところ、「非常にわかりやすい内容です。」と事務局長から大変喜ばれました。
(8) 外資系の会社の安全管理体制の構築を指導して喜ばれました
自動車関連の大企業の一部が分割され、外資系の企業に買収されました。当然、分割された部分は日本の外資系の独立会社になり、外国人の社長が就任しました。
従来は元の大企業本社から安全衛生に関する指示や連絡があったが、今後は独立して安全衛生活動をしなければならなくなりました。いわゆる、全社管理のシステム構築です。
自社の安全衛生担当者はこの経験がなく、困ってしまい、私に顧問依頼があり活動の指導をすることになりました。
外国人重役は日本の安全衛生活動の手法が理解できず、スタッフは説明に苦労していたが、日本の安全衛生活動の経過や現状などを安全衛生スタッフに説明して指導した。このことにより、安全衛生スタッフも自信が持てるようになり、その後の本社管理活動の構築ができました。
安全衛生コンサルタントの専門性が活きた事例です。
(9) 職場のコミュニケーションが活発化して喜ばれました
A社は超精密加工メーカーで従業員は20名の事業場です。長年勤続してきた60歳以上の従業員と新規分野の拡充に伴いその都度中途採用された20〜40歳台の従業員の混成職場です。
常々、職場のまとまりに問題意識をもっていた社長から、工場の移転を契機に安全衛生研修を依頼されました。この半日研修のなかに「働き甲斐のある職場づくり」をテーマにしたグループ討議を組み込みました。このようにグループで話し合うことは今までなかったようで、この研修を通じてコミュニケーションが活発化し社内が明るくなったと社長から大変喜ばれた。この後も引続いてサポートさせていただいていますが自主的な職場改善活動が活発に進行し職場が大いに改善されてきています。
(10) 「安全第一」を指導し品質と生産に改善効果があらわれ喜ばれました
B社は大手企業の一部門が分社化された従業員120名の食品加工メーカーです。
数件の休業災害が発生したことから安全衛生管理特別指定事業場に指定されました。この業界の経営環境は悪く従業員の半数以上を占めるパート従業員も削減につぐ削減の状況下での指定でした。
厳しい状況のもとでの安全衛生管理の改善でしたが、改善が進むにつれパート従業員からヒヤリハット情報が積極的に提出されるようになり、さらに、職場の作業方法や冶具・設備などの改善提案が活発になりました。
この結果、安全衛生環境が改善されたのみならず、生産性や品質ロスの改善効果も現れてきました。すなわち、安全に取り組むと品質も生産にも効果があらわれるという「安全第一」の意義が実践されたのです。
経営的に厳しい環境下でこの指定を受けられた社長は予期しなかった効果に喜んでおられます。
(11) 国立大学の安全衛生診断を行い喜ばれました
国立大学は平成16年の国立大学法人法等関係6法の施行に伴い、国立大学法人となりました。法人化に伴い労働安全衛生関係法令等の規制を受けることとなり約5年が経過し、労働安全衛生法等が要求する安全衛生管理体制の確立等に努めてきたことは安全衛生委員会等の活動によりうかがえましたが、具体的な安全衛生管理活動は個別の研究室単位の自主活動に依存している傾向が依然見受けられました。
安全衛生活動の基本である5Sの指導から始まり、安全衛生管理体制の確立、化学薬品等の管理、機械器具等の管理及び事業者としての責任等の指導のための安全衛生診断を2回に分けて実施しました。今回の診断では、安全・衛生の各分野のコンサルタントが6人で担当しましたので、広範囲にわたる指導が可能となり、大学側より感謝の言葉を頂きました。
(12) 車いすの作業者の作業台の高さを可動式にして喜ばれました
この事業所は従業員50名の縫製工場で車いすの作業者がいます。電動ミシンなどの作業台の椅子は一般的な椅子の高さでしたので作業者は車いすから乗り移って仕事をしていました。労働安全コンサルタントがその事業場を訪問したときに乗り移るときの転倒、落下の危険性を事業所に指摘し、事業所も快く車いすのままで作業できるように作業台を可動式に取り替えてくれました。作業者は、事業所に負担をかけまいとしていままで遠慮してきたそうです。これは外部の専門家からの助言が活かされた例です。